お知らせ

「花咲く道」ブログをご覧頂きまして、ありがとうございます。

この度ブログをこちらに移しました。

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胃痛むと朝餉をぬきて

朝々の洗面すめば夫(つま)の顔勤めにむかふきびしさをもつ

 

胃痛むと朝餉をぬきて出でゆきし夫のこと一日心を去らず

 

ありし日は夫を疎(うと)みし人の骨抱きて夜更け夫帰り来ぬ

 

母30代前半の頃の作品です。

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さつき一鉢

(はは)逝きし後憚(はばか)らぬひとつにて家居のわれの足音高し

 

貧血と知りたる後もわれのみの昼餉(ひるげ)にさして手数をかけず

 

われのみの昼餉炬燵(こたつ)に運びくるこの気安さも慣れて思はず

 

魚を焼くにほひまじれる夕風のなまあたたかし街並み行けば

 

家内に眺むは白き花よしとさつき一鉢置きて寝につく

 

一~四句目、祖母が亡くなった翌年の作品で、母が37歳の時でした。

(三句目、少々季節はずれの句が入りました。)

五句目はそれからちょうど10年後の作品になります。

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野のすみれ

野のすみれ湯呑にさしぬ

               永病みて外に出づるなき老い姑(はは)のため

 

いささかの慰めとならむ常臥しの姑の窓辺に朝顔を植う

 

祖母がまだ生きていた頃の歌で、母は34歳でした。

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打たれしに

打たれしにこだはり夜半(よは)を目ざめつつ

                冷えて流るる涙を拭かず

 

紅ひきて少しは心和みたり眠り足らはずたゆき朝に

 

わが貌(かほ)の如何に老けしか

         過ぎし日に親しき人はふりむかざりき

 

打たれしに、との言葉を選んではいますが、実際には父に殴られた母でした。母が菊作りの先生か菊作り仲間(男性)と楽しくお喋りをしていたからとかいうあまりにも馬鹿げた理由からでした。今でもあの時の青く腫れた母の顔を思い出すと、可哀想でなりません。父が生きていたなら、私がこの歌を掲載することに大反対したでしょうが、その父も亡くなり4年が経ちます。母が36歳の時の作品です。

 

ひとときの平安にして目覚むればかへる悲しみ抱きて眠る

 

眠れずに明けし一日は目つむれば暗きに沈む心地に耐ふる

 

今日は悲しい歌ばかりを集めました。これはそれぞれ、母が37歳と46歳の時の作品です。どんなつらい出来事が他にもあったのか、私にはもうわかりません。

 

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相通ふ思ひを

まだ小さき苗にしあれど手入れする指先しるく菊の香はたつ

 

菊作る友の来れば相通ふ思ひを持てる楽しさにをり

 

母は花の手入れが好きで上手でした。鉢植えのさつきやつつじなど、我が家の廻りに沢山あり、全て母がまめに手入れをしていました。いつ頃からか母は菊も育てるようになりました。秋の菊花展に出品するような大菊です。菊作り仲間が近くにいて、時々家に来てもらっては色々おしえてもらっていたようでした。母が44歳の時の作品です。

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苺摘みゐる母を思ふ

この朝も苺摘みゐる母を思ふ夜明けの床に雨を聞きつつ

 

選果前の苺は山とつまれゐて甘きかほりは作業場に満つ

 

新潟の苺の収穫は、6月に入ってからでしょうか…まだひと月以上早いですね。

ごく初期の作品で、母が32歳の時でした。

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苺畑は

三人の孫を思ひて友作る苺畑は花盛りなり

 

母の親友のことを歌ったもので、母が59歳の時の作品です。

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相容れぬ思ひもちゐき

相容れぬ性いだきつつ舅姑(ちちはは)と諍(いさか)ひもなし嫁して十年

 

諍ふといふにあらねど相容れぬ思ひもちゐき姑(はは)ありし日は

 

一句目は、母が32歳の時の作品です。この時既に、母が嫁いで14年ほど経っています。何年も寝たきりだった祖母が亡くなったのは、母が36歳の時でした。二句目は、一句目の12年後、母が44歳の時の作品です。

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野ばらの匂ふ

自転車をひきて歩めり夕風に野ばらの匂ふ径(みち)に入りきて

 

幾日もかかり田の草取り終へて野ばらの匂ふ夕道帰る

 

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望まざる嫁といはれし

土踏まぬ草履(ぞうり)いくつもいでてきぬ永く病みたる姑の遺品に

 

亡き姑が病みてこもりし六畳を出てきて夫(つま)の姑にはふれず

 

祖母はいつも病みてゐたりといふ子らに

               健やかな日の姑を語りぬ

 

朝々を我に結はせて亡き姑は髪切らざりき永く病みても

 

かへりみて悲しみもなし望まざる嫁と云はれしとほき日のこと

 

一、二句目は祖母が亡くなった年の作品で、母が36歳の時でした。続く三句はその翌年の作品です。

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姑逝きしのち

(はは)ありて保ちしわれの緊張か姑逝きし後幾日も臥す

 

喉はれて食物何も要らざれば臥しをり逝きし姑思ひつつ

 

私が中二の時の夏休みでした。祖母は高熱が出て危篤状態になりました。亡くなる時まで高熱が続いたように記憶しています。祖母の葬儀が終わった頃に、今度は母が高熱を出し寝込んだのですが、じきに私も同じように熱を出して一緒に寝込みました。まるで、祖母の熱がこちらに移ったような気がして、二人して不思議な気持ちがしました。

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朝暗き部屋を点して

(こた)へなき姑(はは)に向ひて姑の子ら

         こもごも己(おの)が名をいふあはれ

 

(おとろ)へて眠れる姑が唐突に亡き舅(ちち)呼ぶをまじまじと見き

 

朝暗き部屋を点して冷えそめし姑の死顔を剃りてととのふ

 

永病みし姑の柩に朝夕にみがきてやりし入歯も納む

 

年永く歩めず逝きし姑の脚細々として足裏うすし

 

年永く病みたる故に姑のお骨灰多くして抱けばかろし

 

祖母が危篤状態に陥る前、何日も高熱が続いたように記憶しています。このとき母は36歳、私は中学二年生で、夏休みの間の出来事でした。

二句目のことは今も良く覚えています。意識が無いように見えた祖母が、突然目を開けて祖父のことをはっきりと呼んだので、母はとても驚いたと言っていました。

祖母が亡くなくなったのは夜中のことでしたので、兄も私も眠ってしまっていたのですが、何年も後になってから母が私達に、「あのとき、夜中でもお前達を起こせばよかった、ひとが死ぬということはこういうことなのだよと見せるべきであったかもしれない」と言ったことがありました。

祖母の葬儀が終わった頃に今度は母の具合が悪くなり、なぜか私も同じ状態になったのですが、二人で1週間も寝込むことになります。

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命危ふき姑につきゐる

暗き灯(ひ)の下に見守る姑(はは)の顔鼻すじ高し永く病みきて

 

弱き脈きざめる熱き手を取りて命危ふき姑につきゐる

 

枕辺に子ら寄り来しを喜びて病みゐる姑が声たて笑ふ

 

食細く病みゐる姑が枕辺に集まる子らの名を呼びたがふ

 

祖母は半身不随で長いこと寝たきりだったのですが、何年間だったのかはっきりとは覚えていません。母の歌を見ると、祖母は10年間程も寝たきりだったように思われます。祖母が危篤状態になり、叔父伯母達が駆けつけた時の歌です。母は36歳、私は14歳でした。

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ギプスに重き足かかへ臥す

雪解けを促す日差し明るきにギプスに重き足かかへ臥(ふ)

 

照りかげり病室の窓過ぐる雲見つつギプスの足かかへ臥す

 

妹が活けくれし花スイトピイのやさしき色に和(なご)みて臥せる

 

勤め退け見舞ひ呉るる子を待つ人が

              ベッドの手すり掴(つか)みまどろむ

 

母が50歳の時、足の関節に痛みが出て手術を受けたことがありました。

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納めて佇てば

父の骨納めて佇(た)てば父が植ゑし萩伸びゐたり墓にふれつつ

 

亡き父の話出づればよき爺と吾子らのいふに慰められつ

 

長病みの姑看取りつつ唐突に逝きたる父を幸とも思ふ

 

スーパーの雑踏にゐてひとときを父なきことの悲しみ忘る

 

母方の祖父は、脳溢血で突然倒れ数時間で息を引き取ったそうです。69歳でした。母が35歳の時の作品です。

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臥す姑のみの家に帰りて

玄関にもれくる鼾(いびき)に安堵せり臥す姑(はは)のみの家に帰りて

 

くり返す同じことばのむなしくて呆けしか姑の忘るるはやし

 

年永く老い姑守りて家ごもるわれをも子らはあはれなどといふ

 

よき嫁と吾をいふ老ら長病みの姑を疎める心を知らず

 

母が49歳の時の作品でした。

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おたまじゃくしは

除草剤まきて見まわる水口におたまじゃくしはひしめきて寄る

 

いきものの為と除草剤きらふ子は田の草を取る苦しさ知らず

 

除草すと田を這ひをれば

        曲げゐるに慣れたる腰のすぐには立てず

 

田草取るわが手元よりゆらゆらと翅やはらかき蜻蛉とびたつ

 

三句目までは母が30代半ばの作品で、四句目は40代半ばの作品です。二句目の「子」とは私の兄のことで、兄が16歳の時でした。三句目、ずっと腰を曲げて作業をしていると痛くてすぐには腰を真っ直ぐに伸ばせない、と母が言っていたのを思い出します。

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亡き兄に習ひしやうに

畑のこと田のことわれに教へ呉れし兄思ひ出づ

 

働きて働きてうから育てくれし兄なり

 

働きてややに屈みし兄の背を今に忘れず

 

ここに歌われている「兄」は、母の義兄のことです。母が義兄を詠んだ歌は数少ないのですが、それでも母がどれ程義兄のことをありがたく思っていたかがよくわかる気がします。この歌は、母がいつも短歌を書きとめていたノートの端に書かれていたものでした。

 

亡き兄に習ひしやうに畑のもの植ゑてこの春も作付終る

 

これは母が57歳の時の作品です。「義兄」が亡くなって随分と時が経っても、いつも義兄を思い出しながら田畑の作業をしていたのだと思います。

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近道に

土手越えて川の朝霧わが畑に流れ行く見ゆ橋渡る時

 

近道に農道を来し薄月夜蛙の声は地より湧(わ)き立つ

 

家から田まで自転車で10分程ですが、途中の川にかかる橋から、川向こうの田畑に霧が流れるのが見えたのでしょう。母が58歳の頃の作品です。

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どの顔も手も

緑増す田に水引きて見廻れば前山の方うぐいす鳴けり

 

農道に集まり憩ふ農婦われらどの顔も手も日焼けて光る

 

土手越えて川面の霧の流れくる苗田にをれば寒し日暮れは

 

二句目、野良仕事の合間に母は、両隣の田畑のお母さん達と一緒に休憩をしていたようです。どの人も、太陽の下での農作業でとても日焼けしていて、「肌がつっぱるものだからみんなの顔がつやつや光って見えるんだよねぇ」と母が言うのを聞いた覚えがあります。

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隙間に出でてたんぽぽは

色淡く花開きをり地下街の明りに茄子(なす)の苗は売られて

 

遮断機の上るを待てば踏切の隙間に出でてたんぽぽは咲く

 

一句目、野菜の苗のようなものが太陽の光及ばぬ地下街で売られていたことが印象的だったようです。茄子の苗が地下街で売られててねぇ、と母が私に言ったのをよく覚えています。でも、どこでの話だったのか・・・新潟駅だったような気もします。

二句目は、東京で一人暮らしをしていた私の所に母が訪ねて来た時だったように思います。私は当時、小田急線沿線に住んでいたのですが、その最寄駅の踏切だったのでしょう。一旦遮断機が下りると、上り下りの電車が続くのでなかなか開かない踏切なのに、それでもたんぽぽが咲いているのを見て母が、こんな、場所も無い所にねぇ、と言ったのを覚えています。

母が44歳、私が22歳の時のことでした。

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わが汗涙浸みしこの土

山畑は元の原野に戻りゐて登り来たればうぐいすの鳴く

 

山畑は茅野(かやの)となりぬ若き日のわが汗涙浸(し)みしこの土

 

昨日と同じく山の畑を詠んだ歌ですが、これは作者59歳の作品で、前回の歌より25年ほど時が隔たっています。今度私も実家に帰ることがあったら登ってみようかと思います。

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山畑の荒れしに座せば

うぐいすの声を真近に聞きたくて

                         峡(はざま)の畑(はた)に吾が登り来し

 

(くは)入れぬ春幾度か畝跡(うねあと)の起伏もなくて荒れし山畑

 

ありし日の舅(ちち)と励みし山畑の荒れしに座せば土あたたかし

 

杉植ゑむことなど夫(つま)と語りつつ峡の畑にうぐいすを聞く

 

山裾にある田畑とは別に、山を登って行った所に畑があったようです。私は行ったことがありませんでした。

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田植ゑ終りし一日

帰省せし人も総出に連休の村は田植ゑの賑(にぎ)はいに過ぐ

 

夜半(よは)幾度も目覚むる癖に悩みつつ

             田植ゑ終りてしるく疲るる

 

すずらんの香りを部屋に満たしめて

             田植ゑ終りし一日(ひとひ)こもれる

 

手作業のため時間のかかった田植えも、ようやく終わりました。 

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田より帰れば

長病みの姑(はは)の臥所(ふしど)

           ヘルパーのやさしき声す田より帰れば

 

あまり忙しい時には、ヘルパーさんをお願いしたことがありました。

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田植ゑの数日

田植ゑするわが小田の上風にのり

         蒲公英(たんぽぽ)の種子数多(あまた)越え行く

 

田植ゑかご置きて休みぬ遠山に消え残る雪の形云ひつつ

 

見出しだけ読みし新聞枕辺に積みて田植ゑの数日は過ぐ

 

手植えをしているため時間がかかっております。田植えの日々、まだ続きます。

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疲れては

疲れてはやさしき言葉もかけずして

      常臥(つねふ)す姑(はは)の襁褓(むつき=おむつ)取り替ふ

 

老ひ姑の呼ぶに起きゆく緩慢をいましめをれど夜中は眠し

 

これも田植え最中(さなか)の、作者36歳の時の作品です。 

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田植ゑ

苗取りて束ねる術を知らぬとて

               若きは寄りぬ苗代(なわしろ)の畦(あぜ)

 

苗代に育った苗をいったん取って束ねてから、手植えに取りかかります。

 

田植ゑ枠一直線にころがして夫(つま)と手植ゑす日の入りてなほ

 

ねんごろに苗手植ゑせり米余ると言はれたる日も今年の春も

 

田を植うと一日励みし夕暮れはむくみたるごとわが顔重し

 

一日田に浸りたる足ほてりつつ寝つかれずいて田蛙を聞く

 

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吾ひとり畦に憩へば

畑起こすわが足元に寄り来ては虫くはえゆく雀の親は

 

われひとり畦(あぜ)に憩へば

                    歩み寄るひばりは土に紛(まぎ)るる色す

 

風にのりわが畦に来し岩つばめ一時群れていっせいに去る

 

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