トップページ | 2008年3月 »

2008年2月

梅、雀

家にては気のつかざりし梅の香の帰り来たれば玄関に満つ

                            

近づけば雀とびたちて雪の上(へ)に小さき体の形残れる

                          

咲き満ちし白梅の鉢を部屋隅に雪にこもりぬその香もわれも                          

| | コメント (0) | トラックバック (0)

舅姑

わびしさの極まりにけり舅姑の襁褓(むつき)縫ひつつ雨にこもれば

 

病もて口きけぬ舅(ちち)に何ごとか問ひかくる姑の低き声する

 

病む舅の皺伸ばしつつ白き髭剃りゐてふいに涙こぼれき

 

指先にガラスの曇りぬぐひつつ臥す舅姑に初雪を告ぐ

 

死期迫る老がしきりに空に出す意識なき手を握りてやりぬ

 

常臥しの姑(はは)に心を残しつつ舅逝きたまふ春待たずして                              

| | コメント (0) | トラックバック (0)

交通事故

道の端に倒れて応へなき人に子を負ひし妻はすがり呼びかく

 

事故の後血の色乾く国道を速きバイクは連なりて過ぐ                                                                                                                  

| | コメント (0) | トラックバック (0)

舅姑

病む姑を看りつつ思ふ職も技も持たざるわれの老ひし日のこと

 

わが姑の癒ゆる日あらば奇跡とぞ

                  にべもなく医師はわれに告げたり

 

家隅に癒ゆる当てなく臥す姑はわれの脳裡を消ゆることなし

 

座りゐる様いぶかりて吾がかけし手に意識なき舅は倒れ来

 

もの問へばうなづくのみの病む舅に真白き髭はいたく伸びたり                                                       

| | コメント (0) | トラックバック (0)

黄ばみたる夫(つま)の教員免許状家を支へて二十年経ぬ

                        

若き日の夫が日記にわれのことやさしき少女と記しをきたり

                         

その性に似しごと若き日のままに夫の字画のくずることなし

                           

夫とゐて夜の刻長しゆきちがふ思ひのありて黙してをれば

| | コメント (0) | トラックバック (0)

死後の処置尽くして夜勤明けし日は寮はわびしと妹が来る

 

嫁ぎても白衣脱がざること決めて迫りくる日々を励む妹

 

花嫁の装ひ成りし末の娘をながめて母は多く語らず

 

新婚の旅に末娘を送り来て黙しつつ父も母も歩めり                                  

| | コメント (0) | トラックバック (0)

虫垂炎手術を受けて

かくも易く歩行不能となるわれか手術口僅か二寸といふに

 

わが臓器とり出だされてガラス器に標本のごと納まるを見る

 

手術口怖れつつゐるに回診の医師は一気にガーゼを剥がす

 

覚めゐるはわれのみあらず病棟に忍びつつする咳きこゆ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

如月 (二月)

続きたる寒気ゆるみし雨の夜は氷柱の落つる重き音する

 

明るみし空より淡き陽のもれて積もらぬ雪のひもすがら舞ふ

 

み社(やしろ)の森を越えくる日を待ちて戸を開け放つ雪晴れし朝

 

如月の半ばとなりて降る雪は一日ニ尺一夜にニ尺

 

雪降るが常の二月の寒からず水底の鯉静かに動く                                    

| | コメント (0) | トラックバック (0)

トップページ | 2008年3月 »