舅亡き後

雪広く踏みたる中にしつらへし柩(ひつぎ)へ香の煙たなびく

 

亡き舅(ちち)の残せし酒もたづさへて奥津城へ雪の野を渡り行く                              奥津城(おくつき)=墓所

 

左手に飯食む姑(はは)がときをりに匙(さじ)鳴らしをり舅なき部屋に

 

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舅姑

わびしさの極まりにけり舅姑の襁褓(むつき)縫ひつつ雨にこもれば

 

病もて口きけぬ舅(ちち)に何ごとか問ひかくる姑の低き声する

 

病む舅の皺伸ばしつつ白き髭剃りゐてふいに涙こぼれき

 

指先にガラスの曇りぬぐひつつ臥す舅姑に初雪を告ぐ

 

死期迫る老がしきりに空に出す意識なき手を握りてやりぬ

 

常臥しの姑(はは)に心を残しつつ舅逝きたまふ春待たずして                              

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舅姑

病む姑を看りつつ思ふ職も技も持たざるわれの老ひし日のこと

 

わが姑の癒ゆる日あらば奇跡とぞ

                  にべもなく医師はわれに告げたり

 

家隅に癒ゆる当てなく臥す姑はわれの脳裡を消ゆることなし

 

座りゐる様いぶかりて吾がかけし手に意識なき舅は倒れ来

 

もの問へばうなづくのみの病む舅に真白き髭はいたく伸びたり                                                       

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